2008鹿島槍ヶ岳　ダイレクト尾根

①ダイレクト尾根取り付きへ		ダイレクト尾根登攀＆北俣本谷滑走の１Day計画で石橋さんと鹿島槍ヶ岳へ行ってきました。【4月11日】　お互い仕事終了後、大谷原で待ち合わせ。　今回は長丁場のプラン、またダイレクト尾根取り付きまでの雪崩、落石回避の為、大谷原に着き数時間の仮眠ののち、夜が開ける前の3：00にヘッデンを装着し出発。　雪は引き締まっており、歩きやすかったが、北俣ゴルジュあたりからデブリ地帯となり、3時間予定のダイレクト尾根取り付きへ、5時間も費やしてしまう。（この時点で、計画に無理が生じ始めていた…）　ダイレクト尾根は第１岩峰、第2岩峰とあるが、岩峰はすべて巻ける為、終始雪壁登攀となる。ガスで隠れていた太陽も姿を現し、雪もだいぶ緩んできて、傾斜もかなりきつい。ザイルで確保しつつ、つるべで登るが、１歩１歩に神経が削がれる。特に第2岩峰を巻く雪壁トラバースでは、雪からほんの少し見えた葉っぱの周りを掘り起こし、太さ数センチの小枝を束ね、ランニングビレイを作り、不安定な雪壁トラバースを乗り切る。お互いに、ザイルいっぱいまで伸ばしての登攀であったが、第2岩峰を乗越すまでに時間を要してしまい、鹿島槍・南峰に登頂したのが夕刻5：30。9時間以上の登攀となってしまった。　後に2人で反省したが、この時点での判断が、今回の山行での一番の判断ミスであった。夕方5：30、太陽は沈みかけており、また雪質も硬くなり始めている。これから吊尾根に下降し、滑降準備。落ち着いて考えれば時間的に滑走は無理と判断出来るが、そのときの自分たちは、何とかギリギリ間に合いそうだ！の考えになってしまい、吊尾根への下降を急いだ。しかし南峰からの下降も容易なものではなかった。一方がスノーバーで支点を作り、ロアーダウンに近い状態で確保しつつ、もう一方がしっかりした足場を作りながらの下降となり、予定していたドロップポイントに着いたのが6：30。急いで滑走の準備にかかる。全ての準備を整え、後は滑るのみの状態。この時点でやっと滑走は無理だと判断することが出来た… 　太陽は沈み、まだ薄明かりはあるが10分後はおそらく真っ暗。雪質はアイスバーン。傾斜はおよそ45°。この状態で滑り出すのはあまりにも無謀すぎる。ビバークすることを決める。　雪洞を作りながら、何とか会の方に、無事であること、ビバークし下山が翌日になることを、連絡する為、携帯電話を取り出すが圏外。無線を使いコールし続けるが、こちらも応答がない。約1時間コールしたが、無線も期待が持てなくなってきた。連絡さえ取れればと考えていたが、取れない以上、ゆっくりもしていられない。翌朝出来るだけ早い時間に下山し、連絡を入れる為、雪洞で数時間疲れを取るため仮眠。【4月12日】　深夜1：00に下山開始。お互い寒くて眠れなかったと言うが、お互いが相方のいびきを聞いているだけに、多少なりとも熟睡は出来たようだ。昨日下降してきたトレースを頼りに南峰へ登り返し、冷池山荘を越え、赤岩尾根より下山。途中山荘あたりに着くころには、疲れのほかに睡魔も襲ってきた。前を歩いていた石橋さんが左足を股下まで雪に埋める。『先に行ってて下さい。』の言葉で先を歩くが、振り向くとヘッデンの明かりが全然動く気配がない。足が抜けなくなったのかと思いつつも、引き返す気力がない。しばらくすると明かりが動き、石橋さんがやってきた。後で聞いたことだが、足が埋まった状態で5分くらいだったが熟睡していたらしい。その後赤岩尾根の下降も気力、睡魔との闘いとなり、30分歩いては休憩、目を閉じ、また30分歩いては…の繰り返しとなる。このような下山の途中、高千穂平あたりで、自分の携帯にたまっていたメールが受信され、受信されるという事は電波が通じる。朝方5：00頃、会の方に無事であること、今下山中であることを連絡することができた。そして8：00過ぎに車を止めてある大谷原へ着き、再度下山報告をする。　今回の山行では森代表をはじめ、会員の皆様にご迷惑、ご心配をお掛けいたしまして、申し訳ございませんでした。南峰に着いたときの判断ミスを今後の山行で繰り返さないよう、反省するとともに、無理して滑走しなかったことの最後の判断が、今回無事に下山出来たと考えております。
②ルンゼをぬけて
③北峰と滑降地点（左端）
④三角岩直下
⑤最終ピッチ
⑥鹿島槍南峰ピーク		⑦雲海上の剣岳
⑧滑降準備は整ったのに。。		⑨中央左が南峰ピークでその下がダイレクト尾根北俣本谷はダイレクト尾根の右側のルンゼ状の谷