「親不知海岸までの道をたどって」 5日目
自 平成17年8月27日〜 至平成17年9月9日
たらっぺ山の会 石橋 (筆)

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8月31日 雨のち晴れ
   三俣山荘(6:30)→烏帽子小屋(15:30)
鷲羽岳頂上

鷲羽岳頂上



水晶岳頂上

水晶岳頂上



真砂岳

真砂岳



赤牛岳

赤牛岳
 
 昨日からの雨は降り続いている。まだ8月なのに寒い。一枚多く着て雨具を羽織る。

 鷲羽岳が目の前にあるはずなのだが上部はガスがかかっている。ざれた道をアップがてら上がっていく。乾いていたらずるずる滑りやすい道だが湿っていて歩きやすい。1時間で山頂。雨は止まないがガスが切れたりで視界はある。けど雲ノ平方面は見ることができなかった。天上の楽園と期待していたのに残念だ。
 
 くだりは所々岩稜が出るので慎重に下る。もう今日で5日目なので歩く生活が日常となってきた。毎日歩けるということはなんと素晴しいことなのか。ただ一瞬たりとも辛いということはまだない。かみ締めて歩けと全細胞に言い聞かす。

 相棒に言わせると登山者はマゾだという。登山のレベルが上がれば上がるほどマゾ度も上がるらしい。でも困難なルートを突破することは快楽だと思う。世間一般の人はそう考えてないようだが。

 水晶小屋にザックをデポして水晶岳までピストンする。往復1時間で行ってこられた。ああザックがないとなんと軽やかなことか。

 小屋でカップラーメンをすする。水晶小屋は北アルプスで一番小さな小屋らしく「小屋」そのもの。受付の小柄な女の子は愛想がよく自分はそれほどでもなかったが相棒はストライクゾーンだったらしい。やけに菓子とか買っていた。そこに「ななかまど」という雑誌があり、三俣・水晶・雲ノ平の小屋を経営している伊藤さんが発刊しているものがあった。一読してみると面白かった。印象深かったところは山小屋という自然の中での利用客の傲慢さや現代人の大部分がロボットのようにそしてレール上に生かされていることや山小屋の売り上げ代金に応じて税を徴収することへの林野庁への訴訟など信念を貫いて生きている数少ない人間だとうらやましくも思った。
 
 山小屋の従業員に概して言えることはあまりにも主観的になりすぎて自己が固まりすぎてしまう風に感じられた。下界で世の中に流されすぎるのもどうかと思うが。人間は数多くの出会いの中から成長していくと思うのである程度は人とのふれあいも必要なのではと思った。
 
 小屋は発とうとするとザックと体が同じくらいのおっさんが水晶方面から近づいてきた。ザックは継ぎ足しだらけで靴も昔のキャラバンシューズで、少し話かけるとうれしそうに「昨日は赤牛の山頂にテント張ってすごく良くてただ水を汲んでくるのを忘れて往復4時間かけて水場を探しさらに水が溜まるのに1時間かかってしまったよ。これから三俣か野口五郎かどっちに行こうか」と尋ねられたが適当なこと言って遭難してしまうと責任問題になるので笑って「赤牛、今度行ってみます」と言って早急に再出発。相棒と人生ああなったらやばいぜと言い合うがあながち自分たちの将来?かと少し不安を抱く。

 真砂岳あたりから北アルプス裏銀座縦走コースとなり両サイドの景観が広がり右には表銀座の燕岳、左は赤牛岳が横たわってきた。ガスも明けてきて太陽も望んできた。そして気持ちの良い縦走路。14時に野口五郎に着くがここのテント場は昨年より利用ができなくなったとのこと。しかたなく烏帽子のテント場を目指すことになる。

 3時間の行程で烏帽子小屋に着く。烏帽子小屋の主人は人のよさそうな人で水を1Lサービスしてくれた。そうしてくれるとこっちも負けて菓子など多めに買ってしまう。相棒はビールだが。テント場の近くに池塘があり今夜は蚊が気になった。 

槍ヶ岳山荘→三俣蓮華山荘<<==>>烏帽子小屋→船越小屋